2009年 11月 10日
11月9~10日の2日間で同業者6名とともに種子島の3ポイントのサンゴ調査をしてきた。 1本目は種子島の北西部に浮かぶ馬毛島の北東部の水深5mほどの海へ。ここはエダサンゴの群落がすばらしいと聞いていたので楽しみにしていたが、海に入るなり無残な光景が広がっていた。 サンゴは広範囲で崩れ白化したサンゴの死骸には藻類が付着していた。生きているサンゴを確認するのはきわめて困難だった。去年の被度(一定面積に占める珊瑚の割合)40%前後あったらしいので、わずか一年間で劇的な変化が何らかの原因で起きた。この夏の海水温はサンゴ内に共生する褐虫藻が死ぬほど上昇はしていないので、この線はない。どんな理由でサンゴが死んでいったのだろうか・・・ サンゴは通常、白化してからしばらくの間は崩れることなく形はそのままであることが多いが、原型をとどめているものがまったくといっていいほどないので、最近死んだのではなく去年の調査直後の冬に死んだかもしれない。 しかし、死んだ珊瑚のガレバはまるで死の海のように見えるが、よく観察すればガレバにはぎっちと正体不明のイソギンチャクが繁殖していた。このイソギンチャクは去年からあるらしい。その他、○○ウニも多く確認できた。しっかり生きものたちが生きていのだ。この調査は100年続けるらしいので、今度の気の遠くなる調査によって、どのようにここの海が変化していくのか明らかになるのは興味深い。 2本目は種子島の北西部にある浦田ビーチへ。 あ~何か学生時代を思い出すなあと調査へ行く皆をパシャッ! ここは、屋久島のダイビングポイントである元浦と似ていて、舞っている魚も屋久島とにている。サンゴは元浦より多い印象を受けた。ここのサンゴの変化は特になく、前年とほぼ同じ被度となった。被度は20~40%。 屋久島では今だ確認していない、伊豆ではよく見かけるトラウツボがいた。 種子島は屋久島より温帯に近い海なのかもしれない・・・ 笑える楽しい一夜明け、3本目は種子島の西部にある住吉へ。 ここはかつてエダサンゴの大群落があったが、1998年のエルニーニョで全て死滅したそうだ。被度にして0~1%。エルニーニョから11年がたつが、サンゴの回復はほとんどしてないように思える。しかし、よーく観察すれば、ごくまれに小さなテーブル状サンゴを確認できた。これから長い時間をかけてゆっくりとサンゴが回復していくのだろうか・・・ ここは、馬毛島の海のように、サンゴのかけらはあまりなく石灰質の岩肌につくマユハキモやトサカノリに似た褐色の海藻が目立つ海だった。そして海では初めてみる海ブドウに大興奮してしまった。ひょっとすると、ここはサンゴの海ではなく、海藻のしげる海になるかもしれない・・・ 海藻の多さも温帯に近い海だからだろうか・・・ 海ブドウという名は図鑑では載っていないので、正式名称があるはずなのだが・・・知ってる方がいたら教えてください! 種子島の海の印象は屋久島に比べて、生きものは少なく淋しい感じがしたが、よく観察すれば、死に絶えたサンゴの上にわずかではあるが新たな生きものが暮らしていた。森の遷移では大木がずっと生きているということは、森の成長、更新がストップしているということになる。大木はやがて倒れ、朽ち果てていく過程で生きものの餌になったり、住処になって命が尽きてもなお他の命を支えながら森の重要な役割をになっていく。そうやって、森は命のバトンを渡しながら、ゆっくりと変化し行き続けている。この森の遷移とどうようの流れが海にも当てはまるのだろうか。サンゴの死滅は悲しい事実だが、まったく生きものがいなくなったわけではない。サンゴに頼らず生きる生きものがしっかり生きていた。これから先、毎年種子島に潜りに行くことで、どう海がかわっていくのか?これからの種子島の海の遷移は興味深い。僕がよぼよぼのじいさんになったころには、面白いデータが蓄積されていると思うので、乞うご期待です!笑 今回、隊長には気づいていなかった海への視点や知識をたくさんもらい、また久しぶりに学生時代の合宿のような雰囲気をつくってもらい楽しい調査となった。やっぱり色んな人と一つのことを共同でやっていくことは、意見の違う異なった考えを知ることができて、自分の考えの幅が広がるのでとても大事なことだと思う。 隊長がこんな視点もくれた。 「短期的な現象で物事を判断すると間違った結論をだしてしまうことがある。自然は長期的な視点で見ていくことが大切だよ。」 種子島の海は今、人間から見たら悲惨な情景に写るかもしれない。しかし、長い目で見たら再生のスタートなのかも?!種子島の生きものたちを見ていると、そう思えてならない。 種子島の生きものたち!来年また会えるの楽しみにしてるよ~!
by shunzo_seaphoto
| 2009-11-10 20:49
| 珊瑚(さんご)
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アバウト
プロフィール
田中俊蔵 1977年生れ
-Shunzo Tanaka- 屋久島で自然暮らし&ガイドをしながら ライフワークとして海の生きもの たちの写真を撮り続けています。 屋久島ダイビングガイド和蔵 http://ocean.wazo.jp 「海を旅する。」 http://oceanphoto.exblog.jp 「屋久島の自然はカッコイイ!」 http://yakland.exblog.jp/ 「大地を旅する。」 http://landphoto.exblog.jp 自然暮らし&ガイドのブログ「心葉」 http://ocean.wazo.jp/kokoloha.html 検索
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